「誰の死体?」ドロシー・L・セイヤーズ

Whose Body?Whose Body?

Dover Publications 2009-11-18


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ねえ、そっちがよほど頭がいいか、でなきゃこっちがよほどばかだってことかな
I say, are you rather clever, or am I rather stupid?(引用)

ドロシー・L・セイヤーズの「誰の死体?」
原題「Whose Body?」1923年を読みました。


ドロシー・L・セイヤーズ(1893-1957)はアガサ・クリスティと並び称される、英国推理小説の女王。
その代表シリーズである、貴族探偵、ピーター卿ものの第一巻です。


最初は原書と邦訳とあわせて読むつもりだったんですが、原文が…私の力ではほとんど理解できなかったので、もう途中からは邦訳だけ読みました。英国貴族とか執事とか、とにかくばか丁寧な言葉で長ったらしくしゃべるうえにそこにさりげなく皮肉をいれたりユーモアを入れたり薀蓄をもりこんだり…高度すぎて理解できません…。


とりあえず訳者さんの後書きで、ピーター卿が「ピーター卿 Lord Peter」であって「ウィムジイ卿 Lord Wimsey」でない理由等の説明があり、貴族の称号のつけかたにもいろいろルールがあるんだなあ…と、勉強になりました。英国貴族と会話する機会なんてたぶん一生ないでしょうから、称号のつけかたまちがえて恥かくってこともないでしょうけど。


あらすじとしては、すっぱだかで鼻眼鏡しかかけていない男の死体が、平凡な一市民の風呂場に忽然と出現し、その死体がどこからやってきたのか、また誰の死体なのかがわからない。
そこへ暇と金があまりある貴族のピーター卿が、有能な執事と、親友でスコットランド・ヤードのパーカー警部とともに、まったくの趣味でもって、犯罪捜査にあたるという…


なんというか、とにかく実に英国らしいユーモアにあふれた作品だなという印象でした。
英国のユーモアといえばブラックユーモアですけど。

誰の死体? (創元推理文庫)誰の死体? (創元推理文庫)
Dorothy L. Sayers

東京創元社 1993-09


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マジック・ツリーハウス「女王フュテピのなぞ」

Magic Tree House #3: Mummies in the Morning (A Stepping Stone Book(TM))Magic Tree House #3: Mummies in the Morning (A Stepping Stone Book(TM))
Sal Murdocca

Random House Books for Young Readers 1993-08-24


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メアリー・ポープ・オズボーン:著
マジック・ツリーハウスシリーズの邦訳では第二巻にあたる、

  • 「女王フュテピのなぞ」原題:Mummies in the Morning(1993年)
  • 「海賊の秘法をさがせ」原題:Pirates Past Noon(1994年)

を読みました。原書だと、第三巻と四巻になります。


第三話は古代エジプトが舞台。ピラミッドのなかで女王の幽霊と出会い、ヒエログリフの謎を解いて死者の書をみつけだす、という物語です。
ヒエログリフの勉強になっておもしろかったです。
第四話は、カリブの海賊たちにつかまってしまうお話。


第一話からつづく、ツリーハウスの持ち主は何者か、Mとは?
の謎が解け、プテラノドンや騎士など、ジャックやアニーの冒険を手助けしてくれていた影の存在の正体がわかります。


…私……てっきりマーリンかと思ってたのですが…違ってたのね。
なんか、勝手にマーリンだと思い込んでいたせいで、だいどんでんがえしをくらった気分で楽しかったです。


しかしMさん…。正体があかされたのはいいんですが、日本のこどもたちには「は? 誰?」なんじゃなかろうかと、ちょっと思いました…。


さてさて。今年もいよいよ最後です。あまりたくさんの本は読めなかったですが、円高だったこともあって購入数だけは例年より多め。まだまだ読んでいないものもたくさんあるので、来年もぽちぽちがんばりたいです。
よいお年を!

女王フュテピのなぞ (マジック・ツリーハウス (2))女王フュテピのなぞ (マジック・ツリーハウス (2))
食野 雅子

メディアファクトリー 2002-03


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過去まとめ:マジック・ツリーハウス

「サンタが空から落ちてきた」コルネーリア・フンケ

When Santa Fell to EarthWhen Santa Fell to Earth
Paul Howard

Scholastic Paperbacks 2009-09


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コルネーリア・フンケの「サンタが空から落ちてきた」を読みました。
読んだのは英訳版で、「When Santa Fell to Earth」
原書はドイツ語で「Als der Weihnachtsmann vom Himmel fiel」1994年


なんとなく、明るめの、なんというかいかにも楽しいクリスマスって感じの本が読みたくなったので読みました。
24日までには読み終わるつもりだったんですが、まにあいませんでした…けど。
英訳版は英訳版独自の挿絵のようです。挿絵が非常にたくさんで、ほぼ絵本に近いような状態です。
ページ数は160Pくらい。


あらすじ
サンタの世界も拝金主義がはびこり、すっかり機械化もされてしまいました。いまでは、むかしながらのやりかたでクリスマスのプレゼントをつくったり配ったりする、ほんとうのサンタはたったひとりになってしまいました。同じような志をもった仲間は、チョコレートのサンタにされてしまったのです。
そんな、ある嵐の日、トナカイの手綱が切れてしまい、サンタは空から落ちてしまい…?


トナカイが可愛いかったです。
印象的だったのは、おばちゃん天使とおじちゃん天使…。いかにも人の良い、世話好きのおばちゃんと、最後においしいところをもっていくおじちゃんがよかったです。というかハゲで小太りの天使というのは新鮮でした…。
邦訳はWAVE出版から浅見昇吾:訳ででています。

サンタが空から落ちてきたサンタが空から落ちてきた
浅見昇吾

WAVE出版 2007-12-07


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「ザ・ギバー 記憶を伝える者」ロイス・ローリー

The Giver (Readers Circle (Laurel-Leaf))The Giver (Readers Circle (Laurel-Leaf))

Laurel Leaf 2002-09-10


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ロイス・ローリー Lois Lowryの「ザ・ギバー 記憶を伝える者」
原題「The Giver」1993年 を読みました。
1994年のニューベリー賞受賞作。


邦訳は、講談社から掛川恭子:訳で出ていましたが、絶版とのこと。
しかし新訳が「ギヴァー 記憶を注ぐ者」というタイトルで、新評論から島津やよい:訳で近々発売されるようです。
とりあえず原書だけ読みました。


特にこの時期にふさわしい物語を、と思って選んだわけではなかったのですが、結果的には、まさに今の時期にぴったりの物語でした。
雪の降る寒さにふるえながら、もうじきクリスマスというこの時期に読めてよかったです。


あらすじ
物語の主人公ジョーナスは、戦争や死という言葉のない世界で、その概念すら知ることもなく、飢えもなく苦しみもない世界で暮らしています。
12歳になり、職業を与えられることになったジョーナスは、<記憶を受け継ぐもの>に選ばれます。
それは、ただひとり人々のために、真の苦しみや痛みを背負うことになる特別な、そして尊い職業なのでした…


この物語の世界では、職業は与えられるもので選択の自由はないし、家族といったものは存在しますけれども血のつながりがあるわけではありません。
子供を生む専門の職業があり、それは職業としてはさほど尊敬を得られるものでもなく、また産んだ子供を自分が育てることはありません。
人口は完全に管理され、勝手に増えることのないよう、その原因となる欲望は薬によって抑制されています。


ある意味、非常に天国に近い世界です。天候も管理され、寒さもなく雪が降ることもありません。人々は平穏な人生を送ることができます。しかしそれは選ばれた人間のみが送ることのできる生活です。選ばれることがなかったり、他の人間の迷惑や社会の荷物になったりすれば、<リリース>されます。生まれるまえにいたところへ…。


最初は、よくある設定の物語だなと思いながら読み、なかなか理想的な社会だよね、なんて思いながら読んでいたのですが、だんだんだんだん…気味悪さがつのってきて、この世界の人間には痛みや悲しみがないんじゃなく、痛みや悲しみを感じないだけなんだ…とわかったときには、なんともいえない恐怖すら覚えました…。


そもそも、たったひとりにすべての苦しみを背負わせて、ほかの人間は幸せって、それでいいのか、とか、考えさせられたわけなのですが、それってもしかするとキリスト教の…よく知らないんですがイエス・キリストはすべての人類の罪を身代わりになって背負ったんだとかなんだとか、そんなことをどっかで聞いたか読んだかしたような…。
重要な登場人物である Gabriel は、大天使ガブリエルの名前だし…。
あと、主人公の名前 Jonas は、辞書をひくと旧約聖書Jonah(ヨナ・イオナ)からきている名前のようですが、<不幸(凶事)をもたらす人物>って意味もあるようで。
なんでも、海が荒れた責任をとって海に捨てられて、巨大な魚にのみこまれて、やがて吐き出されたとかなんとか。
ヨナ書はこちらで読めますけど→http://ja.wikisource.org/wiki/%E3%83%A8%E3%83%8A%E6%9B%B8(%E5%8F%A3%E8%AA%9E%E8%A8%B3)
なんかわかりにくいです…。
ただ、ジョーナスが日焼けしすぎて痛みを感じたエピソードとか、いわゆる<犠牲>に選ばれるとか、いろいろ関係ありそうな感じがします。感じがするだけでそれ以上のことは私にはわかりませんが。そもそも英語も7〜8割くらい読めたかなあという感じがするだけで、細かいところでよくわかっていないところもたくさんあるかと思うので、なんともいえません。


なお、この物語には続編がでていて、全部で三部作とのこと。ただ、邦訳がでているのは今のところ第一作だけのようです。

ギヴァー 記憶を注ぐ者ギヴァー 記憶を注ぐ者
島津 やよい

新評論 2010-01-08


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「時間のない国で」ケイト・トンプソン

The New PolicemanThe New Policeman

Greenwillow Books 2008-05-01


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ケイト・トンプソンの「時間のない国で」
原題「The New Policeman」2005年
を読みました。
2005年ガーディアン賞、ウィットブレッド賞コスタ賞)、ビスト最優秀児童図書賞受賞作。


とりあえず原書を…(厳密には原書は英国版。私が買ったのは米国版ですが)…なるべくゆっくり読みました。どうも私、はやく読もうと思うと、文字を眺めるだけで頭のなかに意味が入ってこないことが多いようです。そうなると何度も前に戻って読み直したりしなくちゃならないので、焦らずゆっくり読んだほうが、むしろ結果的には速く読めることに最近気づきました。
アイルランドが舞台の物語で、ティル・ナ・ノグとか、トゥアハ・デ・ダナーンとか、フィアナ騎士団とかオシアンとかチェンジリングとかフィドルとかって文字をみただけで、ときめくものを覚える方には、いろいろ面白い要素がつまった物語だと思います。反対に、アイルランドの妖精とか音楽とかダンスに興味がない人には、少々わかりにくい部分があるかもしれないなと思いました。


あらすじ
誕生日のプレゼントに「時間がほしい」という母親のために、JJは「永遠なる若さの国(ティル・ナ・ノグ)」を訪れます。
本来なら「時間」のない国、時が止まったままで老いることも死ぬこともなく、健康な者は永遠に健康で、病や傷をおった者は永遠にそれが癒えることのない国。いわゆる「妖精」たちが棲むといわれるその国で、どういうわけか「時間」が流れはじめているようで…?


楽譜が40曲近く掲載されているので、楽譜が読めたり何か楽器が演奏できたり、アイルランドのトラッドに興味がある方には、二倍楽しい本かもしれません。


英語は…7〜8割は読めたかな…という気はします…。ストーリーは理解できました。
感想としては、犬が…。
犬好きとしては犬がかわいくて、そしてちょっとせつなかったです…。


続編もあって、現在のところ原書は三作出ているようですが、これ一作でも物語としてはきれいに完結していると思います。
邦訳は上下巻にわかれていて、東京創元社から渡辺庸子:訳ででています。

時間のない国で 上 (創元ブックランド)時間のない国で 上 (創元ブックランド)
渡辺庸子

東京創元社 2006-11-18


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「ゆきのまちかどに」ケイト・ディカミロ

Great JoyGreat Joy
Bagram Ibatoulline

Candlewick 2007-10-09


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このあいだ読んだケイト・ディカミロの「愛をみつけたうさぎ」の挿絵が良かったので、その挿絵を描いたバグラム・イバトーリーンと、ディカミロがコンビを組んだこの絵本を読んでみることにしました。
うさぎの方は挿絵が白黒だったのがちょっと残念で(小説だし、挿絵を全部カラーにしたら高額な本になっちゃうだろうからしょうがないのはわかってますけど…)、この人の絵はぜひカラーで堪能したいなあと思ったからです。


それとこの時期。やっぱり一冊はクリスマスっぽいものを読みたいなという気分になりまして。


絵本ですので、ストーリーはシンプルです。
特別、大きな奇跡が起きるわけでもありません。
どちらかといえば地味です。
それはつまり、特別な能力をもった特別な人間にしか起こせない奇跡ではないということで…。
誰もが、誰かのことを、ほんのちょっと気にかける。せめてクリスマスのときだけでも。
それだけで奇跡…というか、人をあたたかい気持ちに、そして自分も幸せな気持ちになることができるんですよね…。


英語はそれほど難しくありませんでした。
原題の「Great Joy」は、少女が教会の劇で天使の役を演じたときのセリフからきています。
「behold, I bring you good tidings of great joy」
キリスト教新約聖書、「ルカによる福音書」のなかの一節のようです。


最後のページに文はありませんけれど、絵がすべてを物語っている感じで良かったです。絵本ならではですね。


邦訳はポプラ社から、もりやま みやこ訳で出ています。

ゆきのまちかどに (ポプラせかいの絵本)ゆきのまちかどに (ポプラせかいの絵本)
バグラムイバトーリーン

ポプラ社 2008-10


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過去まとめ:ケイト・ディカミロ

「宇宙への秘密の鍵」ホーキング

George's Secret Key to the UniverseGeorge's Secret Key to the Universe
Garry Parsons

Simon & Schuster Children's Publishing 2009-05-19


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ホーキング博士のスペース・アドベンチャー1「宇宙への秘密の鍵」
原題「George's Secret Key to the Universe」2007年


最近、宇宙っていいかも。と、ちょっと思いはじめていたのですが、宇宙に関することって何も知らないし、物理や科学ときたら、英語以上に苦手だった私としては、SFっておもしろそうかも。なんて思ったところで、原書で読むのには躊躇するものがありました。いろいろ難しそうだなあ…と。
それで、私でもわかるような、やさしい宇宙の本、それも面白く読めそうな本はないかと思い、この本を読んでみることにしました。


この本は、英国の著名な物理学者、スティーヴン・ホーキング博士が、作家で娘のルーシー・ホーキングと共作した児童書。
楽しい物語のなかに、星の誕生からブラック・ホールについてなど、さまざまな宇宙に関する知識が散りばめられています。
ちょっとしたコラムや、星の写真(カラー)などもあり、勉強になります。


あらすじ
ジョージの両親は、なるべく自然のものを使った生活をこころがけていて、科学文明的なものを排除しています。そういったものに頼る生活が、地球温暖化などをまねき、地球を滅ぼすと考えているからです。そのため、ジョージはパソコンをもっていません。
しかしある日、ジョージは隣の家にすむエリックと、その娘アニーと知り合いになります。エリックは科学者でした。そしてエリックは、科学が地球を滅ぼすのではなく、科学で地球を救うことができると考えているようでした。
エリックは、スーパーコンピューター<コスモス>をつかって、人類が移住することのできる新しい星を探しています。ジョージもまた、コスモスの力をかりて、宇宙空間へと旅立ちます…!


英語はそれほど難しくなく、イラストもたくさんあり、読みやすかったです。といっても百パーセント理解できたとはいえませんが、9〜8割は理解できた…と思う…思います。
コラム欄はちょっと難しいなと感じた部分もありますけど、物語部分は、ほぼ問題なく楽しめました。
書かれたのが2007年なので、冥王星が惑星じゃなくなったことに関しても書かれています。


いちばん驚いたのは、ブラック・ホールに一度吸い込まれたら、もう二度とでてこれないと思ってたんですけど、違うかもしれないってこと。
おもしろかったです。
本当はきっとすごく難しいことなんでしょうけど、それをわかりやすくわかりやすく書こうとしてくれているのがいいです。
お話もよく考えられていて、わくわくしながら読むことができました。
最初から三部作の構想のようなので、明かされていない謎などもありますけど、これ一作でも一応は完結しています。
二巻はもう発売されているのですが、まだペーパーバックにはなっていないので、読みたいけどちょっと我慢します。


邦訳は、岩崎書店から さくま ゆみこ:訳で出ています。

宇宙への秘密の鍵宇宙への秘密の鍵
さくま ゆみこ

岩崎書店 2008-02-09


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