「The Canterville Ghost」リスベート・ツヴェルガー

ifyouaskme2005-01-30

リスベート・ツヴェルガーの「The Canterville Ghost」。
オスカー・ワイルドの「カンタヴィル家の幽霊」(…この作品、邦訳タイトルが統一されていないようで、「キャンタビルの幽霊」とか「カンタビルの亡霊」とか、訳者によっていろいろみたいです。どれが一番ポピュラーなタイトルなのか、よくわかりません)
イギリス版、ペーパーバック。
オスカー・ワイルドですので、もともと英語が本当なんですが、ドイツ語タイトルは、「Das Gespenst von Canterville」。1985年の作品です。


オスカー・ワイルドというと、「ドリアン・グレイの肖像」とかあたりの作品と、「幸福な王子」とかあたりとあるんですが、この作品は、「幸福な王子」とかあたりの、童話の系列につらなる作品ですので、子供さんが読んでも大丈夫です。(英国とかの絵本って、たま〜に、日本人の感覚からすると、子供さん向けじゃないものもあるので)


あらすじ:
幽霊の出る英国の屋敷を、アメリカ人の金持ちが購入し、家族で住みはじめます。幽霊はアメリカ人を追い出そうと、あの手この手で怖がらせますが、怖がられるどころか、バカにされる始末。反撃されてしまいます。
そんなある日、幽霊は、家族のなかの、心やさしく、かわいらしい少女と言葉をかわし、少女の「愛」によって、自分は救われるかもしれないと考えます…


銃やら暴力ではなく、「愛」によって、魂は罪から解き放たれ、ゆるされ、天へと昇ることが許される…
という、非常に道徳的なお話。


絵本としては、文章、やや多めですが、幽霊屋敷ものとしては、オーソドックスなお話で、わかりやすいので、なんとか読めたような気がします。


ただ、ちょっと気になるのが、「愛の力は何よりも強い」ということで、幽霊が少女をさらい、少女も幽霊を「愛」の力で救おうと決意するのですが、
さらわれていた間、少女と幽霊の間に何があったのか、それは語られていないんですよね…。


個人的に気に入ったのは、幽霊にマクラを投げつけるシーン。幽霊の伝統のなかで、こんなことをされたのは初めてだろう…みたいな文章があったり、
「あれが由緒正しい幽霊に対し、礼儀正しい行為だったとは思わない」
と、アメリカ人自身が反省してたり。ちょっと笑えました。


絵としては、特に幽霊の絵が秀逸で好きです。哀れなんだけれども、どこかユーモラス。
英語が読めないからといって、敬遠されてしまうには惜しい絵本。