「うちの一階には鬼がいる!」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ

The Ogre DownstairsThe Ogre Downstairs
Diana Wynne Jones




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「こっちのせいなんだよ − どういう人かちゃんとわかろうとしなかったからさ」「それはこちらも同じことだ」
"It's just us - not trying to understand you.""The same goes for me,"(引用)

ダイアナ・ウィン・ジョーンズ(Diana Wynne Jones)の「うちの一階には鬼がいる!」、原題「The Ogre Downstairs」(1974年)
かなり初期の作品です。デビューから三作目、児童書としては二冊目。
邦訳と洋書は英国版のペーパーバックを読みました。アメリカ版もでていたみたいですが現在では入手は難しいようです。原書の英国版のほうも難しいかもしれません…。原書のほうは邦訳が出る前に一度読んだのですが、ちゃんと読めた自信がなかったので、邦訳がでてくれたときは嬉しかったです。邦訳は東京創元社原島文世:訳、佐竹美保:画。表紙だけでなく中に挿絵もかなりあって、凝ってます。佐竹美保さんの絵が好きな方なら、そちら方面でも楽しめるかも。

あらすじ
キャスパーとジョニーとグウィニーの三兄妹は、母親が再婚したことで、継父のジャックと、その息子のダグラスとマルコム兄弟と、ひとつ屋根の下に暮らすことになります。継父は怖くていやなやつで、ダグラスは乱暴でいやなやつで、マルコムはイヤミでいやなやつ!
三人は継父のことをひそかに「鬼」と呼びます。その鬼が、ある日、化学実験セットを買ってくれたのですが、そのセットにはとんでもない薬品がまざっていて…?

空を飛んだり、中身が入れ替わったり、透明になったり。てんやわんやの騒動と、家族が本当の家族に近づいてゆく過程が書かれます。子供たちから「鬼(原文は「ogre」。オーガー、人食い巨人)」と呼ばれている父親の名前がジャック(Jack)なのが面白いです。ジャックと豆の木では、ジャックが豆の木をのぼって鬼(人食い巨人)の城にいき、宝物を盗んで、最後には巨人を殺します。この物語では、鬼のほうが下から二階や三階の子供部屋にのぼってくるのですが、実際のところ、鬼とよばれている父親からしてみると、子供たちのほうが「悪い鬼」だったりします。お互いがお互いのことを「相手が悪い」と考えてる状態です。
子供たちが鬼の書斎からパイプを盗んだり、鬼を殺そうとしたり、鬼が大食漢だったり、ベイクトビーンズ(豆のケチャップ煮)とか、金のたまごを生むにわとり…というか、にわとりの脚や「牝牛」がすごい価値を生むあたりやあれやこれや、この物語が「ジャックと豆の木(Jack and the Beanstalk)」のパロディになっているところがかなりあるように思います。
ジャックと豆の木の物語は青空文庫さんで読めます→http://www.aozora.gr.jp/cards/000329/card43124.html
英語で読みたい方はこちらのサイトさんとか…挿絵つきで読めます。無料→http://www.mainlesson.com/display.php?author=lang&book=red&story=jack また、話ははしょってありますけど動画と音声つき絵本がこちらのサイトさんで無料で楽しめます→http://www.bbc.co.uk/cbeebies/stories/jackbeanstalk.shtml


うちの一階には鬼がいる! (sogen bookland)うちの一階には鬼がいる! (sogen bookland)
原島 文世

東京創元社 2007-07


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書庫:ダイアナ・ウィン・ジョーンズ