「妖精王の月」O.R.メリング 2

The Chronicles of Faerie: The Hunter's Moon (Chronicles of Faerie)The Chronicles of Faerie: The Hunter's Moon (Chronicles of Faerie)
O. R. Melling

Amulet Books 2006-04-19


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And that's why I love them. But you have to keep in mind, they are not like us. They don't have the same kind of feelings. Guilt is something they know nothing about.
だからこそ、あたしは妖精が好き。でも、妖精があたしたちと違うことは忘れないで。妖精は人と同じような感情をもってないの。罪悪感なんて金輪際わからないの。(引用)


O.R.メリング(O.R. Melling)の「妖精王の月」について、引き続きもう少し。

作品中に、ワイルド夫人(Lady Francesca Wilde)の「Lady Wilde's Ancient Legends of Ireland」(アイルランドの古代伝説)1888年からの引用があるのですけど、文章の引用だけでなく、エピソードもワイルド夫人の著作を元にしているものがいくつかあるんじゃないかという気がします。
角が生えた魔女がやってくるあたりは、「The Horned Women(角の生えた女たち)」からではないかと。
また、フィンヴァラ(Finvarra)やミディール(Midir)が登場する話もいくつかあるようで、フィンヴァラが登場する「Ethna The Bride」などはフィンヴァラが人間の花嫁をさらう話であり、妖精の国から花嫁を取り戻したあとも、ピンがささっていて花嫁は眠りつづけている、といったあたりは、グウェンが妖精の投げ矢(fairy dart)に当たって動けなくなったあたりのエピソードとも被る気がします。

ちなみにワイルド夫人は、オスカー・ワイルド(Oscar Wilde)のお母さんで、アイルランド国粋主義者。W・B・イエイツ(William Butler Yates)などとも親交のあった人だとか。(以上、参考:冨山房「妖精事典」キャサリン・ブリッグズ)

ワイルド夫人の「アイルランドの古代伝説」は、英語だとこちらのサイトさんで読めます→http://www.libraryireland.com/AncientLegendsSuperstitions/Contents.php/

「妖精王の月」の原題は「The Hunter's Moon」、「Hunter's Moon」(狩猟月)というのは、通常は、英語だと10月の「Harvest Moon」(収穫月)の次の満月ことみたいです。ただ、この作品では十月というわけでもなく、妖精界の暦で七年ごとにやってくる、ある儀式の年のことをさしています。

この小説は、日本だと児童書の棚にあると思うのですけど、児童向けというよりティーン向け、少女小説かと思います。
英語の文章は、難しいというほどでもありません。アイルランドゲール語などがところどころに出てきますが、巻末に解説があるので、それを読めば意味がわかるようになっています。


妖精王の月妖精王の月
O.R. Melling 井辻 朱美

講談社 1995-02


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