愛をみつけたうさぎ―エドワード・テュレインの奇跡の旅

The Miraculous Journey of Edward TulaneThe Miraculous Journey of Edward Tulane
Bagram Ibatoulline

Candlewick 2009-05-27


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ケイト・ディカミロ:作 バグラム・イバトーリーン Bagram Ibatoulline :挿絵
「愛をみつけたうさぎ―エドワード・テュレインの奇跡の旅 」
原題「The Miraculous Journey of Edward Tulane」2006年


「ねずみの騎士デスペローの物語」(ニューベリー賞受賞作)を以前に読み、わりと読みやすかったので、べつの作品も読んでみようと手に取った本。原書だけ読みました。


あらすじ
エドワードは陶器のウサギ。着ている服も高級で、懐中時計まで持っている、高貴なウサギの人形です。
ある日、エドワードは、誰からも愛されるのに、誰も愛さないお姫さまのおはなしを、持ち主の女の子といっしょに、おばあさんからききます。
お姫さまのたどる運命は悲惨なもので、おはなしは救いのないままで幕を閉じます。
それはまるで、エドワードにかけられた呪いのようでした。
エドワードもまた、愛するということを知らなかったからです…


挿絵が一章にひとつはありますし、一章の長さは短く、さくさく物語は進むので、英語の本としては読みやすかったです。
かわいらしい表紙だったので、かわいらしいお話かなと思っていたら、意外とせつない系だったので、ぼろぼろ泣いちゃいました…。
エドワードは人形なので、どんなに酷い扱いをうけても、肉体的な痛みは感じないのが、まだ救われます。
心は痛んで痛んで、痛みまくるのですが…。


邦訳は子安 亜弥:訳でポプラ社からでています。
挿絵もいい感じなので、良い本を読んだなあというのが素直な感想です。

愛をみつけたうさぎ―エドワード・テュレインの奇跡の旅愛をみつけたうさぎ―エドワード・テュレインの奇跡の旅
バグラム イバトーリーン

ポプラ社 2006-10


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過去まとめ:ケイト・ディカミロ

「ちいさなちいさな王様」ミヒャエル・ゾーヴァ

Little King DecemberLittle King December
Michael Sowa

Bloomsbury Pub Ltd 2006-04


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ミヒャエル・ゾーヴァ Michael Sowa 絵、アクセル・ハッケ Axel Hacke 文
「ちいさなちいさな王様」
の、英訳本を読みました。


英訳タイトルは「Little King December」
原書のタイトルは「Der kleine König Dezember」 ドイツ語です。
邦訳は講談社から、木本栄 / 那須田淳 :訳で出ています。


ゾーヴァさんの絵が前から気になっていたんですけど、英訳本はあまり出ていないうえに、出ていても入手困難になっていたり…。
とりあえず、この本は入手が可能だったので、英語で読んでみることにしました。
私の場合は、きれいな絵で英語の勉強がしたいという目的が第一なので、英訳本を選んだわけですが、表紙の絵がドイツ版や日本版と違います。
中の挿絵にでもあるのかな? と思ったのですけど、中にも無くて、残念。
うーん。理由はよくわからないけれど、王様がちょこんと載っている新聞の文字がドイツ語で英語じゃないから削られたとかだったりするのかなあ。


あらすじ
サラリーマンの主人公のまえに、ある日、とつぜんやってきた、ちいさな王様。王様の世界では、生まれたときが一番大きくて、それからどんどん小さくなって、いろんなことを忘れていくといいます。
王様の小さな部屋にお邪魔したり、王様を胸のポケットに入れて外に出たり、一緒に星をながめたり。
主人公と王様の、日常のすきまからちょっとだけこぼれおちたような、不思議な交流の日々のものがたり。


英語は、そんなに難しい単語などは使われていないのですけど、一回目に読んだときは、ちょっとよくわからなくて、2回じっくり読んで、ようやくいろいろ掴めた感じ。
王様が、わたしたちの常識とは、すこし違った世界に住んでいるので、その発言も、普通とやはり違っていて、さらっと意味が掴めなかったといいますか。最初のページで、主人公がしゃべっているのか、王様がしゃべっているのか、よくわからなくて混乱したり。でも、ページ数は60ページほどなので、二回読みはそれほど苦痛じゃありませんでした。長い本だと、一読だけで精根使い果たすので、再読する意欲がなかなかわいてこなかったりするんですけど、これくらいの長さなら、なんとか。


主人公がサラリーマンだったりするので、子供のための絵本というよりは、最初から大人を対象にした絵本かなという気がします。
読んでいて「星の王子さま」を少し思い出しました。

ちいさなちいさな王様ちいさなちいさな王様
Axel Hacke

講談社 1996-10


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「ウルフ・タワーの掟」タニス・リー

The Claidi Collection (Lee, Tanith. Claidi Journals.)The Claidi Collection (Lee, Tanith. Claidi Journals.)

Dutton Juvenile 2003-06-02


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キスはやけどになんか似てなかった。それより翼が生えた気分。
It isn't like being scalded. It's like having wings.(引用)

タニス・リーの「ウルフ・タワーの掟」
原題「Law of The Wolf Tower」1998年。アメリカ版タイトルは「Wolf Tower」で、英国版とは違っています。
ウルフ・タワーシリーズ(The Claidi Journals)全四作の、第一巻。
邦訳と洋書と読みました。洋書は、私が購入したのは↑上に掲載してるアメリカ版で、「The Claidi Collection」といったもの。ウルフ・タワーシリーズの三作が一冊に合本されているものです。非常に分厚いです。普通の辞書くらいの大きさと厚みですが、辞書より重いかもしれません。でも文字は大きめで読みやすいです。シリーズは全四巻(いまのところ)ですので、最終巻だけは別に購入しないといけません。
邦訳は、産業編集センターから中村浩美:訳 桜瀬琥姫:カバーイラスト で出版されています。


あらすじ
<ハウス>と呼ばれる、外界から閉ざされた…というより、自ら閉じこもっている宮廷風の場所で、奴隷として貴族に仕えるクライディは、十六歳の少女。ヒステリックで意地の悪い主人から虐められてばかりの日々にうんざりしていて、なんとか逃げ出したいと思っています。
そんなある日、外の世界<荒地>からやってきた、金髪の王子ネミアンに、クライディはときめきをおぼえます。
捕らわれの身になったネミアンを逃がそうとする、ある女性の口から、クライディは自分の出生の秘密をきかされます。じつはクライディの母親は<ハウス>のプリンセスで、執事と身分違いの恋をしたために、<荒地>へ追放されたのだと。
クライディはネミアンとともに、<ハウス>から逃亡するのですが…?


タニス・リーといいますと、英国ダーク・ファンタジーの女王。大人向けの耽美な作風で知られているかと思うのですが、この作品は、少女小説
設定や展開が王道、という感じでどんどん進むのですが、最後にはひとひねりの工夫がされています。


それが何のために必要なのかもわからず、誰もがばかばかしいと感じるような<掟>や<儀式>でも、それが<掟>であり<儀式>であるという理由だけで、命をかけて守らなければならない…、そんな世界をぶっこわす女の子のおはなし。
なんとなく、占いによって、日々の生活が制限されていた日本の平安貴族を思い出しました…。本当かウソかは知りませんけど、占いの内容によっては、トイレに行っちゃいけない日なんてのもあったらしいですし…

ウルフ・タワーの掟―ウルフ・タワー〈第1話〉 (ウルフ・タワー (第1話))ウルフ・タワーの掟―ウルフ・タワー〈第1話〉 (ウルフ・タワー (第1話))
Tanith Lee

産業編集センター 2005-03


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過去まとめ:タニス・リー

「アメリカ昔ばなし」講談社英語文庫

アメリカ昔ばなし―American folk tales 【講談社英語文庫】アメリカ昔ばなし―American folk tales 【講談社英語文庫】

講談社インターナショナル 1989-09


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講談社英語文庫の「アメリカ昔ばなし」
ラルフ・マッカーシー Ralph F. McCarthy/文
ウェンディ・ウォッマン Wendy Wortsman/絵
この文庫用に、文章は書き下ろしたものになります。
英語のレベルは、TOEIC 320点〜で、前に読んだ「イギリス昔ばなし」と同じなんですけど、「イギリス〜」よりも難しいと感じました。
イギリスの方は、知っているお話ばかりだったから、読みやすかったのかもしれません。


ネイティブアメリカンや、アフリカン・アメリカンのあいだに伝わる昔ばなしを中心に15話。
いたずら…というより、もはや犯罪に近い悪党うさぎの話、そのなかでもクマを騙してしっぽを短くさせる話は、うさぎじゃなくてキツネで、日本や他の国の昔話にもあったような気がしたのですが、どうしてアメリカではウサギになってるんだろう…って最初は少し不思議に思いました。
それで、もしかして、アフリカン・アメリカンのあいだでは、ウサギ=白人ということなのかな…と。
そう考えると、うさぎが今でも他の動物たちに、しゃれにならないトラブルをまきちらしつづけているってラストが、あまりほほえましく思えない…。


収録作

  • Maui Rescues His Wife マウイ、妻を救う
  • Scarface スカーフェイス
  • The Tar Baby タール人形
  • Davy Crockett and Mike Fink デイビー・クロケットとマイク・フィンク
  • John and Marster ジョンと主人
  • Coyote and the Trader コヨーテと商人
  • John's Mule ジョンのらば
  • Crazy for the Stuff ウイスキーに夢中
  • Oolah! ウーラ!
  • Welcome Home お帰りなさい
  • Jughead Parker とんまなパーカー
  • The Pet Trout ペットの鱒
  • Mistaken Identity 人違い
  • Two Hunting Dog 2匹の猟犬
  • Violet すみれ

「シンデレラ」Kinuko Y. Craft

CinderellaCinderella

Chronicle Books 2000-08-01


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Kinuko Y. Craftの「Cinderella」2000年
シンデレラの絵本です。


シンデレラのお話は、シャルル・ペローが有名ですが、グリムにも似たようなお話があります。
が、この絵本の内容としては、アンドルー・ラングのものが一番近いかな〜という印象をうけました。
アンドルー・ラングのものに、小鳥さんがシンデレラをたすけるというグリムの要素と、鶴の恩返し的な要素をたして、さらに王子さまとシンデレラが舞踏会の前に森で会っているというオリジナル(?)の伏線を加えてできているという感じです。
文章が誰との記載がないので、絵も文もキヌコさんかもしれません。
英語は絵本としては難しめのほうだと感じました。


中身の絵はオフィシャルサイトさんで少しだけ見れます
http://www.kycraft.com/book_detail_pages/cinderelladetail.html


シャルル・ペローアンドルー・ラングのシンデレラのお話の邦訳は、青空文庫さんで読めます


シャルル・ペロー
http://www.aozora.gr.jp/cards/001134/card43120.html
アンドルー・ラング
http://www.aozora.gr.jp/cards/001239/card46348.html


過去まとめ:Kinuko Y. Craft

デイルマーク王国史「詩人たちの旅」

Cart and Cwidder (Dalemark Quartet)Cart and Cwidder (Dalemark Quartet)

Oxford University Press 2003-02-06


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われはオスファメロンのために歌うものなり、わが旅する世界はひとつにあらず
I sing for Osfameron, I move in more than one world.(引用)

ダイアナ・ウィン・ジョーンズの「詩人たちの旅」、デイルマーク王国史、四部作の第一作です。
原題「Dalemark Quartet 1 Cart and Cwidder」1975年
邦訳は東京創元社 田村美佐子:訳 カバー絵:山野辺若


あらすじ
馬車で旅をしながら、歌をうたい楽器を奏でる詩人(うたびと)クレネン一家。モリルはその末の息子。本名は、タナモリル・オスファメロン。伝説の吟遊詩人の名前をもらっています。
ある日、キアランという少年が、客として馬車に同乗し、一家とともに旅をすることに。
さまざまな事件が起こり、モリルは父親から、強い魔法の力をもった楽器を譲り受けます。モリルになら、必ずやその力を使いこなすことができるだろうからと…


以前に、迷ったすえ、「牢の中の貴婦人」を先に読んだのですが、先に読まないほうが良かったかな〜と、ちょっと後悔。
「牢の〜」を先に読んでしまったために、謎の少年の正体が最初っから想像がついてしまいました…。
「牢の〜」の方の世界の設定と、このデイルマークでは、似てはいますけれど細かい違いがあるので、あっちのキヤルタンと、こっちのキアランは、必ずしも同一人物ではないのでしょうけど。


同一か同一じゃないか…ということに関しては、
「牢の〜」P83に出てくるアスグリムがヒルダにあてて書いた、
『抑制なき真実とは、
時にも場所にも縛られぬもの』
で始まる詩と、

このデイルマーク王国史1巻のP175でキアランが歌った、
『なにものにも縛られぬ真実は
時にうずもれることも、ひとところに囚われることもない―』
が、同一かそうじゃないのかが気になります…。
いえべつに、同一だったらどうだというわけでもないのですけど…。


読んでいて、ダグナー、ブリッド、モリル、兄・姉・弟という組み合わせや、父親との葛藤などが、「呪われた首環の物語」と似てるな〜という印象を受けたのですが、「呪われた首環の物語」が発表されたのは、この作品のすぐ後なんですね。
この作品の主人公は末っ子なんですけど、長男のほうにスポットをあててみたくなって、書いたのが「呪われた〜」なのかなあと、ちょっとそんなことを思ったりもしました。

詩人(うたびと)たちの旅―デイルマーク王国史〈1〉 (創元推理文庫)詩人(うたびと)たちの旅―デイルマーク王国史〈1〉 (創元推理文庫)

東京創元社 2004-09


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過去まとめ:ダイアナ・ウィン・ジョーンズ

「浦島太郎」英語無料絵本

浦島太郎の英訳絵本。Project Gutenbergで無料で読めます。


http://www.gutenberg.org/etext/30024


うらしま太郎の物語は、ご存知じゃない方のほうが少ないとは思うのですが、子供たちにいじめられているカメをたすける…という、よく知られているバージョンとは少々異なっていて、太郎自身が亀を釣りあげて、逃がしてあげると、じつはその亀は乙姫さまで…という、どちらかというと御伽草子の内容に近いような気もします。なので、カメの背に乗って竜宮に行くわけではなかったりします。竜宮も海のなかにあるというわけでもないような…


ちなみに、boyというわりには、太郎さんがヒゲ生やしてて老けてみえるのが地味に気になります…。


過去まとめ:英語無料絵本