「略奪都市の黄金」フィリップ・リーヴ

Predator's Gold (The Hungry City Chronicles)Predator's Gold (The Hungry City Chronicles)
Philip Reeve

Eos (T) 2006-01


Amazonで詳しく見る
by G-Tools

Because it's better to travel hopefully than to arrive.
希望を持って旅するほうが旅路の果てを見てしまうよりもましだから、でしょうかな。(引用)


フィリップ・リーヴの「略奪都市の黄金」 原題「Predator's Gold」 2003年
「移動都市」の続編です。邦訳は東京創元社から安野玲:訳で出ています。創元SF文庫。後藤啓介:表紙絵
シリーズは四部作で、この後「Infernal Devices」「A Darkling Plain」とつづいて終わります。
「A Darkling Plain」は2006年のガーディアン賞受賞作
あと、シリーズとは関係ないですけど「Here Lies Arthur」という作品で今年のカーネギー賞も受賞してます。アーサー王もののようです。
ちなみにガーディアン賞もカーネギー賞も児童書の賞ですけど、十代後半くらい、日本だとライトノベルの層、高校生さんくらいの年齢向けのものも含まれるので、児童書といっても、この移動都市シリーズは小学生さん向けではないと思います…。小学生は読んじゃダメってことはないですけど、人はいっぱい死にますし、主人公たちはいちゃいちゃしてますし…。どぎつい描写はないですけど。


いまのところ、邦訳は二作目以降はまだ出ていません。英語は、難しいというほどではないのですけど、私の力では六割くらいしかわからないので、できれば続きも邦訳と一緒に読みたいです…。


あらすじ
飛行船をとばして日々の糧を得ていたトムとヘスターは、ペニーロイヤル教授という、うさんくさい客を乗せたことから、ふたたびトラブルに巻き込まれることに。反移動都市同盟からはロンドンのスパイと疑われ、命を狙われます。
一方、氷上移動都市アンカレジは、<死の大陸>アメリカにあるという、緑なす大地、伝説のグリーンランドをめざすという、無謀な賭けにでていました。アンカレジを治める辺境伯赫下は、トムとお似合いの美少女で…?


英雄なんて虚像、つくられるもの、しょせんはただの汚い人殺し。
前作でも、そんなテーマが強く流れていたような気がするのですけど、今作もそのあたりは変わってません。
自分のエゴや都合で行動した結果が、たまたま、ある人たちにしてみれば英雄的行為、またある人たちにしてみれば極悪極まりない非道な行為になる、といったことが、非常にいいバランスで書かれている気がします。
ヒーローじゃないヒーロー、ヒロインらしくないヒロイン。それが基本コンセプトなのかもしれません。なので、古いタイプの物語の型からすると、ヒーローとヒロインが逆転しているような感じも…。


訳者さんのあとがきによると、どうやら今回のこの作品、北欧のヴィンランド・サガを少し下敷きにしているようです。
ヴィンランド・サガって読んだことないのですけど、幸村誠プラネテスの作者さん)が漫画化してるみたいで…。面白そうなので、ちょっと読んでみたいかも…


ヴィンランドのことは「Grœnlendinga saga」と「Eiríks saga rauða」の二つのサガのなかに書かれているみたいです。英訳のタイトルだと「Eirik the Red's Saga」と 「the Saga of the Greenlanders」。
「Eirik the Red's Saga」はProject Gutenbergで読めます。
こちら→http://www.gutenberg.org/etext/17946


掠奪都市の黄金 (創元SF文庫)掠奪都市の黄金 (創元SF文庫)
Philip Reeve 安野 玲

東京創元社 2007-12


Amazonで詳しく見る
by G-Tools


書庫:フィリップ・リーヴ