「星空から来た犬」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ

DogsbodyDogsbody
Diana Wynne Jones

Greenwillow 2001-08-07


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ほんとうに必要なら、なにかしら道は見つかるものですよ
Where there's need enough, a way can often be found(引用)

ダイアナ・ウィン・ジョーンズの「星空から来た犬」、原題「Dogsbody」(1975年)

再読しました。ダイアナさんの作品の邦訳がほとんど出揃ったので(大人向けのものや、最近の作品ではまだ未訳のものがいくつかありますが)、なるべく年代順に読んでみようかと思っています。シリーズものはシリーズごとにまとめ読みしようかなあと思ってますが…

前に読んだときは「僕とルークの一週間と一日」は未読だったのですが、「僕とルーク〜」を読んだあとですと、テーマとかがよく似てるかなあという印象をうけました。「僕とルーク〜」で主人公のデイヴィッドが犬をほしがる記述があるのですが、デイヴィッドと、この「星空から来た犬」のキャスリーンは、境遇がよく似ています。キャスリーンのほうがデイヴィッドの数倍悲惨な状況ですが。

今回も邦訳と洋書と両方読みましたけど、洋書のほう…私がもってたのはアメリカ版ペーパーバックですけど、そちらは現在古書でしか入手できないみたいです。邦訳はまだ入手可能です。


邦訳のあとがきにもふれられている、イェフの名前のもとになったのではないかと推測されているYeff/Yeth Houndsの伝承ですが、キャサリン・ブリッグズの「妖精事典」をみてみますと、ロバート・ハントの「イングランド西部の伝承奇談 Popular Romances of the West England」に記述があるようです。そちらの本はこちらのサイトさん(英語)で読めます→http://www.sacred-texts.com/neu/eng/prwe/prwe056.htm
こちらの伝承では、犬は首なし犬で、マビノギオンにでてくるアラウンの犬とはちょっと違うようなのですが。またYeth Hounds、あるいはYell、とあって、Yeffではないので、もしかすると別の伝承かもしれませんけど…

ワイルド・ハントの伝承は英国の各地にあって、それぞれ微妙に違ってたりもするようです。
犬たちを率いる「あるじ」もいろいろいます。「あるじ」はもともとは北欧神話オーディンでしたけれど、キリスト教の力が強まるにつれて異教の神=悪魔とされて、悪魔がひきいているということになったのだ、という説もあるようです。
ただ「僕とルーク〜」で登場したオーディンと、この作品の「あるじ」の印象はだいぶ異なるので、この作品の「あるじ」の正体はオーディンではなさそうだなあとは思いますが…わかりません。

ワイルド・ハントに関しては、おそらくは不吉なもの不気味なものというとらえかたをしなければいけないんでしょうけど、なんとなく犬たちがいっぱい走りまわるかわいらしいものという印象を、なぜか私はずっと抱いてました。もしかするとその印象は、この作品からうけたものだったのかも…

星空から来た犬 (ハリネズミの本箱)星空から来た犬 (ハリネズミの本箱)
原島文世

早川書房 2004-09-10


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