古王国記「ライラエル」ガース・ニクス

Lirael: Daughter of the ClayrLirael: Daughter of the Clayr
Garth Nix




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わたしの予感では、おまえは先を視る者ではなく、先をつくる者になる。約束しておくれ、必ずそうなると。
I feel that you will be a maker, not a seer. You must promise me that it will be so.(引用)

ガース・ニクス(Garth Nix)の「ライラエル―氷の迷宮」、原題「Lirael」2001年。古王国記シリーズの第二巻です。前作と同じく、邦訳とアメリカ版ペーパーバックとあわせて読みました。
三部作のなかでもこの巻がいちばん長くて、700p近くもあるのでかなり分厚いですけど、一章一章は比較的短く、テンポがいいので、冗長な感じはしません。前作の「サブリエル」が一巻で完結していたので、これもそうかなと勝手に思っていたのですが違っていて、物語は次巻へと続きます。

あらすじ
ライラエルは、同じクレアの一族たちの中では浮いていました。髪の色や肌の色、瞳の色なども違うし、自分の父親が誰かもわからない、なにより十四歳になっても「先視」の力が授かりません。自分よりも年下の少女たちが「先視」の力に目覚め、一人前のクレアとなるたびにライラエルの気持ちは沈み、みずからの命を絶とうとまで思いつめてしまいます。
一方、古王国の王子サメスは、何者かの陰謀によって、アンセルスティエールの学校での試合のあと、大量の死霊に襲われます。友達をたすけるため、武器ももたずに冥界へとひとり降りた王子は、力の強い邪悪なネクロマンサーに捕まり…

前作のサブリエルやタッチストーン、モゲットのその後の話でもありますが、物語の中心となるのは、クレアの娘ライラエルと、古王国の王子サメスのふたりです。主役のライラエルは、みにくいアヒルの子状態で、劣等感から人づきあいも苦手という状況。王子のサメスも、周囲が自分によせる期待に、うまくこたえられないことに悩んでいます。そんな劣等感だらけの未熟なふたりで、特に王子はかなり甘ったれで情けないのですが、この先たぶん成長する…のかな…?
前作では猫のモゲットが活躍しましたが、今作で主人公のパートナーとなって活躍するのは犬。「不評の犬 Disreputable Dog」と名乗って、ほかに名前がなく、主人公も犬のことを「犬」としか呼ばないのがちょっと不思議ですけど…。「Disreputable」って単語知らなかったので辞書をひいてみたのですけど、「評判の悪い、不評の、いかがわしい、たちのよくない、みっともない、みすぼらしい」といった意味のようです。アメリカ版の冒頭では、家族や友人のほか、オリジナルの「不評の犬」、Bytenixの思い出に捧ぐとなっていて、たぶん作者の飼っていた犬がモデルなんでしょうね。「不評の犬」って、あまりいい名前じゃないけれど、罵倒しているわけではなくて、愛情の裏返しというか…バカ犬、とかいいつつも可愛がっちゃうような感じかと。物語からは犬への愛情が滲みでてます。

邦訳は主婦の友社から原田勝:訳、石橋優美子:装画ででています。ハードカバー版は一冊、文庫は上下巻二冊に分かれています。
続きが気になるので引き続き次の「アブホーセン」を読んでみようと思います。


ライラエル―氷の迷宮〈上〉 (古王国記) ライラエル―氷の迷宮〈上〉 (古王国記)
Garth Nix 原田 勝

主婦の友社 2006-11-01


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書庫:ガース・ニクス