古王国記「サブリエル」ガース・ニクス

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往く者が道を選ぶのか、それとも道が往く者を選ぶのか?
Does the walker choose the path, or the path the walker?(引用)

ガース・ニクス Garth Nix の「サブリエル―冥界の扉」(原題「Sabriel」1995年)。古王国記シリーズの第一巻です。「ライラエル」「アブホーセン」と続く三部作となっています。邦訳は三作とも主婦の友社から原田勝:訳、石橋優美子:装画ででています。また、「Across the Wall: A Tale of the Abhorsen And Other Stories」という短編集に「Nicholas Sayre and the Creature in the Case」という外伝が収録されています。そちらはいまのところ未訳のようです。

洋書と邦訳と両方あわせて読みました。邦訳は文庫版もでていますが、文庫は上下巻に分かれています。それなりの量がある話だったので読むのに時間がかかりましたけど面白かったです。残りの二巻もがんばって読んでみようと思います。

あらすじ
サブリエルは、お嬢様が集まる寄宿舎学校で暮らす十八歳の少女。父親と同じくネクロマンサーで、死の世界から魂を呼び戻すことができます。しかし父親のアブホーセンが普通のネクロマンサーと違うのは、死者を眠らせることが主な仕事であること。古王国では、生の世界に蘇った死霊が、生きているものを喰らったりしており、そういったものたちを元の世界に戻すことが望まれているのです。
そんな父親の身に、異変が。敵に捕まったか、あるいは冥界の門をくぐってしまったか…
生死も安否も不明な父親をさがしに、サブリエルはひとり、古王国へと乗り込みます…!

主人公の学校がある世界と古王国は壁で隔てられていて、古王国に近いほど魔法の力が強く、古王国から変な魔物や化け物がやってきたりするという設定。古王国の外の世界はそれなりに科学も発達していて、銃や飛行機、バスや車なんかもあります。映画は白黒、飛行機もまだ発明されたばかりのようですので、現代よりは昔のイメージです。
ストーリーは、次から次へと展開して、読者を飽きさせないように気を配っている感じがします。危機また危機、という感じ。
主人公をサポートするキャラとして登場する、猫の姿をしているけれども猫ではない、危険を秘めた存在であるモゲットは、猫ではないけれども猫好きさんにはたまらないかもしれません。かわいいです。
魔法を使うときの描写がけっこう細かくて、丁寧に書いているなという感じがします。実際に自分も魔法を使っている気にちょっとだけどなれます。ゲームのキャラで魔法を使っているときのような感じといいますか…。イメージしやすい描写です。魔法の種類もチャーター・マジックというものとフリー・マジックというものとあり、チャーター・マジックというのはキリスト教のイメージが重なる気がします。主人公はネクロマンサーというより、エクソシストと考えるほうがしっくりきます。流れる水を死者は渡れないとか、伝承的なものをうまく取り入れてるのもいいです。
ダークファンタジーということで…たしかにいっぱい人が殺されますのでダークかも…とは思いますけど、怖くはないです。
ただ、この本、児童書のくくりに入っているというか、そういうことで売られているとは思うのですが、児童書じゃないと思います。YAだとは思うので、児童書といえば児童書かなあ…とは思いますけど、小学生さん向けとかではないです。ちょっとだけど大人な描写もでてきますし。

ネクロマンサーとネクロマンシーという言葉がでてくるので、どう違うんだ?と思ったのですが、辞書をひいてみたところ「ネクロマンシー necromancy」は「降霊術、黒呪術」のこと、「ネクロマンサー necromancer」はその術をつかう術師のこと、ついでに「necromantic」は形容詞でした…。

サブリエル―冥界の扉〈上〉 (古王国記) サブリエル―冥界の扉〈上〉 (古王国記) (古王国記)
Garth Nix 原田 勝

主婦の友社 2006-07-01


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