ナルニア国物語「馬と少年」C.S.ルイス

The Horse and His Boy (Chronicles of Narnia 3)The Horse and His Boy (Chronicles of Narnia 3)
Pauline Baynes

Harpercollins Childrens Books 1994-08


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If you funk this, you'll funk every battle all your life. Now or never.
もしここでこわがったら、一生、戦いのたびにこわがるようになるぞ。がんばるか、だめになるかだ。(本文より)

C.S.ルイスナルニア国物語5巻、「馬と少年」(原題:The Horse and His Boy)1954年。
邦訳:岩波少年文庫(新版)、瀬田貞二:訳、小風さち:解説。


いよいよ五巻で残り二巻です。
今回、時代は「ライオンと魔女」で活躍したピーターたち、ペベンシー四兄妹がナルニアの王さま女王さまとして治めていた時代にさかのぼります。なんだかちょっと懐かしい感じがします。タムナスさんも再登場。
ただしメインの主役は別になります。前作の「銀のいす」で少しだけ語られていた馬と少年のおはなし。


あらすじ
カロールメンの国で、貧しい漁師の息子として酷い生活をおくっていたシェスタは、ある日、父親によって売られて貴族の奴隷にされそうになります。シェスタは貴族の馬と逃亡をはかります。その馬はナルニアの馬、ことばを話すことのできる馬でした。子馬のころにさらわれて、しゃべることのできない普通の馬のふりをして、ずっと逃亡の機会をうかがっていたのです。
ふたりは自由の国、ナルニアをめざします。
一方、カロールメンの王子は、スーザン女王に求愛したもののすげなくされたため、兵をつれ、女王の強奪をたくらみます…!


馬が愛らしい…。馬への愛情にあふれた一作。


邦題だと「馬と少年」ですが、原題は「The Horse and His Boy」で、とくに「His Boy」ってところが大事なのかなと思いました。つまり、馬の(所有物の)少年で、少年の馬じゃない。まるで馬が主人みたいなタイトルで、普通と逆転してるんですよね。
作中にも、ナルニアの馬を「わたしの馬」と言った人間に対して、その逆の言い方もナルニアではできる、といったやりとりが展開されます。ナルニアでは、馬も人も同等なので、馬が人間のことを「わたしの人間」と言うことだってできるというわけです。でもカロールメンでは馬は人間の奴隷です。


ライオンと魔女」の訳者あとがきで書かれていたことですが、ルイスは「ガリバー旅行記」が好きだったとのこと。
前作の「銀のいす」での巨人の国でのやりとりも少しガリバーの巨人の国でのくだりを彷彿とさせましたが、今回の人間と馬の立場が逆、というのも、ガリバー旅行記を彷彿とさせます。ガリバーが最後におとずれた国は、人間が馬の奴隷になっている国です。
ガリバー旅行記は邦訳は青空文庫さんで読めます→http://www.aozora.gr.jp/cards/000912/card4673.html
英語の原文はProject Gutenbergで読めます→http://www.gutenberg.org/etext/17157 )


馬と少年 (岩波少年文庫―ナルニア国ものがたり)馬と少年 (岩波少年文庫―ナルニア国ものがたり)
C.S. Lewis 瀬田 貞二

岩波書店 2000-11


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