ナルニア国物語「銀のいす」C.S.ルイス

The Silver Chair (Chronicles of Narnia, Book 6)The Silver Chair (Chronicles of Narnia, Book 6)
Pauline Baynes

Harpercollins Childrens Books 1994-08


Amazonで詳しく見る
by G-Tools

Then all I can say is that, in that case, the made-up things seem a good deal more important than the real ones.
だとしても、その場合ただあたしにいえることは、心につくりだしたものこそ、じっさいにあるものよりも、はるかに大切なものに思えるということでさ。(本文より)

C.S.ルイスナルニア国物語4巻、「銀のいす」(原題:The Silver Chair)1953年。
邦訳:岩波少年文庫(新版)、瀬田貞二:訳、井辻朱美:解説。


今回ナルニアにまねかれるのは、前回登場したユースチスと、今回初登場のジル。ふたりは同じ学校の生徒です。その学校というのはあまりいい学校ではなく、いじめっこが放置されています。そのいじめっこたちから逃げる途中で、ふたりはナルニアへ。着くなりジルはとんでもないことをしてしまいます。ユースチスを崖からおっことしてしまうのです!
アスランと出会ったジルは、ナルニアの世継ぎの王子、リリアンの捜索を命ぜられます。王子は魔女にさらわれたきり、行方がわからなくなっていたのです…!


白い魔女が復活し、物語の舞台はナルニアの北の巨人たちの城、そして地下の世界へと。
ふたりの子供と同行する沼人、泥足にがえもんはなかなか味のあるキャラです。原書だとPuddleglum。Puddleは、水たまり、泥だらけにする、などという意味。glumは、陰気な、とか、むっつりしたという意味です。
その名のとおり、なんにでも水をさして気分を萎えさせるのが上手いのですが、そこが愛嬌。


・気になったこといくつか


今回、ナルニアの王妃が蛇に襲われるのは五月祭りの花つみで、これはアーサー王のグウィネヴィアが誘拐された話を彷彿とさせます。
また、「ライオンと魔女」のときもそうでしたが、白い魔女ケルトの妖精の女王といった感じがします。とくに今回は地下の国といったキーワードなど、より妖精の女王に近く、タム・リンなどのバラッドや、また英国の詩人ジョン・キーツの「La Belle Dame Sans Merci」などを彷彿とさせます。
「La Belle Dame Sans Merci」の原文はこちらのサイト→http://en.wikisource.org/wiki/La_Belle_Dame_sans_Merci
「La Belle Dame Sans Merci」を描いた絵はこちらのサイト→http://commons.wikimedia.org/wiki/Special:Search?search=La+Belle+Dame+Sans+Merci&fulltext=Search
などで見ることができます。(特にこちらの絵→http://commons.wikimedia.org/wiki/Image:Redgirl_and_knight02.jpg あたりが好きです。あとウォーターハウスのとか)
美しい妖精と、その虜になる騎士、その運命は呪われたものとなります。
そのほか、マビノギオンのエピソードなども彷彿とさせます。


ジルという名前で連想するのがマザーグースの「ジャックとジル」で、冒頭はもしかするとそのマザーグースジャックとジルが丘の上へ水をくみにいってジャックがころげおち、ジルもころげおちる、という内容のパロみたいなものかなとちょっと思いました。


銀のいす ナルニア国ものがたり (4)銀のいす ナルニア国ものがたり (4)
瀬田 貞二

岩波書店 2000-06


Amazonで詳しく見る
by G-Tools