「素晴らしいアレキサンダーと、空飛び猫たち」ル=グウィン


What could an ordinary cat do for a cat with wings?(本文より引用)

S.D.シンドラー絵、アーシュラ・K.ル=グウィン
空飛び猫シリーズ第三巻「素晴らしいアレキサンダーと、空飛び猫たち Wonderful Alexander and the Catwings」


今回の主役は、こわいもの知らずの、やんちゃな子猫のアレキサンダー。お金持ちの家で、ぬくぬく育った、翼をもたない普通の子猫。なにかすばらしいことをしようと、外の世界へ出かけます。
けれど家のなかと違って、外の世界は危険がいっぱいでした。
トラックに轢かれそうになったり、犬に追われたり。
木に登ったはいいけれど降りられなくなって、飢えと寒さにこごえながら一晩をすごし、みじめな気持ちになります。
そんなアレキサンダーをたすけてくれたのは、黒い翼を持った猫、ジェーンでした…


前作ではジェームズとハリエットにたすけられたジェーンが、今作ではアレキサンダーをたすけます。
アレキサンダーの追い詰められた状況は、前作のジェーンの境遇と少し似ています。そしてジェーンはそのときのトラウマがもとで、いまだに ”ME” と ”HATE” の二言しかしゃべることができません。


大事なところとしては、ジェーンがアレキサンダーをたすける方法が、抱えて飛んでおろしてあげるのではなく、木からおりる道を教えてあげる点かなと思いました。アレキサンダーは自分で木からおりる力はあるのに、その方法がわからないのと、恐怖心からできなかっただけなのです。
そしてそれは、ジェーンも同じ。
しゃべる能力はあるのに、ただ恐怖心からできずにいるのです。


自分はちっとも"Wonderful"なんかじゃないと思うようになったアレキサンダーですが、ただの猫の自分でも、何かジェーンにしてあげたいと考えるようになります。
そうして思いついたのは…?


空を飛べるのは素晴らしいことだけれど、飛べない猫でもできることはたくさんあるんですね。


絵的にはアレキサンダーがかわいくて、シリーズのなかでも特に好きな一冊。
内容とはぜんぜん関係ないですが、最初に表紙を見たとき、一匹たりないと思ったのに、よく見たら木にしがみついてるのを発見したときは感動した。


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素晴らしいアレキサンダーと、空飛び猫たち (講談社文庫)

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