「おばけ桃が行く」ロアルド・ダール


ロアルド・ダールの「James and the Giant Peach」 1961年
ティム・バートン監督によって映画化もされた作品(「ジャイアント・ピーチ」というタイトル。DVDにもなってます)。
私が読んだのは洋書で、レイン・スミス Lane Smith による挿絵のものです。


動物園から逃げ出したサイに両親を食べられてしまい、ひとりぼっちになったジェイムズ少年は、意地悪な親戚のおばさん二人の住む家にひきとられて、いじめられてばかりの、辛い日々をおくります。
そんな少年のもとに、ある日、不思議な小人のおじいさんがあらわれます。

Come right up close to me and I will show you something wonderful. (p9)


いわれるままに近づき、おじいさんの持っている紙バックの中身をみると、そこには不思議な緑色の物体が入っていました。
それを飲めば、不思議なパワーが手に入ると、おじいさんはいいます。
ジェイムズはさっそく飲もうとするのですが、うっかりころんで、こぼしてしまいます。
すると、今まで実なんかつけたことのなかった桃の老木に、ひとつの実がなり、それはどんどんどんどん大きくなって…
ジェイムズが桃の中に入ると、そこには、巨大な虫たちがいました。
クモにムカデにテントウムシにバッタにミミズにホタルにカイコ。
見た目は怖かったり気持悪かったりもするけれど、愉快で個性的な仲間たちとともに、ジェイムズは冒険の旅に出ます!


リアリティといったものが、ほとんどかけらもない物語。ですので、そういったものを重んじる方にはあまり向いていないかもしれません。
ただ、虫たちに関する生態には、ちゃんと本当のことも書いてあって、さりげなく子供さんへの「学習効果」といったものに配慮がされてあったりもします。この本をきっかけに虫に興味を持つ子供さんたちも多いんじゃないかな、という気がします。
それに何より、この本の一番の魅力は、「いかに子供たちを夢中にさせるか」「本を読むって楽しい!と思ってもらえるか」ということに心を砕いて書かれているような気がする点。
それは、ダールの児童向け作品に共通してみられる傾向でもあります。
「本を読むって楽しい」
なんだかんだで、一番大事なことだな〜と思います。
どんなに勉強になって、ためになる本でも、つまらなくて退屈で、「読むのが苦痛」としか感じられなかったら、本を嫌いになっちゃう子供さんも多いでしょうし、そういう子が、大人になってからも本を読むとは、あんまり思えませんものね…


→本の詳細・洋書(amazon)


新訳は「おばけ桃が行く」というタイトルで柳瀬尚紀:訳
旧訳は「おばけ桃の冒険」というタイトルで田村隆一:訳 で、両方とも評論社さんから出ています。


おばけ桃が行く (ロアルド・ダールコレクション 1)

おばけ桃が行く (ロアルド・ダールコレクション 1)

おばけ桃の冒険 (評論社の児童図書館・文学の部屋)

おばけ桃の冒険 (評論社の児童図書館・文学の部屋)