シャーロットのおくりもの


E.B.ホワイト(E.B. White)の「シャーロットのおくりもの」を読みました。私が買ったのは、講談社英語文庫で、難しめの単語は、巻末に意味が掲載されています。挿絵も、ガース・ウィリアムズ(Garth Williams 「しろいうさぎとくろいうさぎ」の絵本が、日本でも人気が高い)の挿絵です。
英語のレベルは、TOEIC 470〜のレベルのようで、そんなに難しくありません。多読をはじめたばかりだけど、ダールくらいは何冊か読んだよ、という方なら、じゅうぶん楽しめると思います。オススメ。


さて、このお話。一言でいうならば、ハムやベーコンにされる運命からクモがブタを救う、というものなのですが、非常に深いです。しかもかなりドライです。
人間がブタを食べるのも、蜘蛛が虫を食べるのも、要は「食物連鎖」であり、それ自体は、善でも悪でもない、といったことが、しっかりと書かれています。
たとえば、蜘蛛が虫を食べなければ、虫だらけになって植物が食い荒され、ほかの草食動物たちが死ぬ、といったようなことです。
もしも人間が、「ブタを食べちゃだめ」ということになったら、野生化したブタが畑を荒らすかもしれません。また、食べる目的以外でブタを飼う人なんて少ないから、ブタは絶滅するかもしれません。
とはいえ、「動物を殺すのはかわいそう」という気持が、尊いものであるのは確かです。「動物が死んでもなんとも思わない」よりは、ずっといいと思います。
動物の肉を食べながら、一方で、動物をたすけたりもする。それが人間。
そのあたりの矛盾というか、葛藤が、この物語では、シャーロットの次の言葉であらわされているように思います。

A spider's life can't help being something of a mess, with all this trapping and eating flies. By helping you, perhaps I was trying to lift up my life a trifle.(p181)


シャーロットは、ハエを罠にかけたり殺して食べたりすることを、悪いことだとは思っていません。そうしなければ、自分が生きられないのですから。でも、そういう生き方を、決して「キレイなもの」とも思っていません。だから、ウィルバーをたすけることによって、自分の人生(クモだけど)を、ちょっとだけ、「なんかいいもの」にしたかった。
そしてウィルバーは友達で、私は友達をたすけた。それだけのことよ、と。


この物語の特筆すべき点は、人間の女の子がブタをたすける物語はない、というところ。
最初、人間の女の子は、生まれてすぐに殺されそうになるウィルバーをたすけますが、それは、きちんと育つか育たないか、育ててみなければもわからないにもかかわらず、育たないと決めつけて殺すなんてよくない、という怒りからであって、食べちゃだめ、ということではありません。ここでは、「食べもしないのに殺すのはダメ」という主張も、見え隠れします。食べるというのは、「命が命をつなぐ」ということ。食べられなければ、その命は誰の命にもなりません。
そして女の子は、ウィルバーが育つと、育てきれなくなって、農場に売ってしまいます。なので、女の子がウィルバーをたすけようと思ったら、お金をはらって、買い取り、自分で育てるのでなければなりません。それが正当というものです。
そしてウィルバーも、タダメシをもらうというわけにはいかないから、自分のエサ代を自分で稼いで、それを払うことによって、殺されずにすむという…
このあたりも、非常にドライ。こういうことを、きっちりと書いてあるというのは、私は好感がもてました。


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邦訳もでています。

シャーロットのおくりもの

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