「鼻のこびと」リスベート・ツヴェルガー


ドイツの作家、ヴィルヘルム・ハウフ Wilhelm Hauffの「鼻のこびと」に、リスベート・ツヴェルガーが絵をつけた絵本。
ツヴェルガーの絵本のなかでも、かなり好きな一冊です。40ページくらい絵本で、文章も、けっこうあります。色使いが美しく、キャラクターも愛らしく、かつ独特の味わい。


私は一応、英訳版と邦訳版と両方読みましたが、英訳版のほうは現在、入手は困難かもしれません。
ドイツ語は、文章だけなら、こちらのサイトさん→http://www.gutenberg.org/etext/6639
などで読めます。「Der Zwerg Nase」というのが原題。


主人公は、とても可愛い男の子。お父さんは貧乏な靴屋で、お母さんは野菜をつくって売っています。
ある日、鼻の長い、奇妙なおばあさんがやってきて、野菜をさんざんいじりまわしたあげく、悪口をいいました。
男の子は頭にきて、おばあさんに、ひどいことをいってしまいます。すると、おばあさんはキャベツを6個買って、男の子に家まで運ばせます。
おばあさんの家で男の子はスープをごちそうになり、リスの姿になって、召使として七年間働く夢をみます。
目がさめると、あわててお母さんのもとへと帰るのですが、お母さんは男の子だとわかってくれません。男の子のすがたは、すっかり醜く変えられてしまっていたのです…。

どこの町も同じだが、この町にも、かわいそうで、そのうえ、おかしなところのある者をたすけてくれる人はいなかった。(邦訳より)


この物語は、かわいらしいだけのメルヘンではなく、世の中の厳しさ、といったものも容赦なく書かれています。
両親に息子だと信じてもらえず、追いはらわれてしまった男の子のことを、たすけてくれる人など、誰もいません。
しかし男の子には、おばあさんの家で身につけた、料理人の技がありました。盗まれた七年間は、まったくムダというわけでもなかったようです。
男の子は、お城の料理人として、やとってもらおうとするのですが…?


ヴィルヘルム・ハウフは、25歳の誕生日を前にして夭折した作家ですが、三冊のメルヒェン集を著しており、グリム童話と並んで、人気のある作家さんのようです。
私が読んだことがあるのは、「盗賊の森の一夜」(岩波文庫)だけですが、三冊のメルヒェン集を一冊にまとめた、「冷たい心臓」(福音館書店)といった本もでています。
「鼻のこびと」は、「アレッサンドリアの長老とその奴隷たち」のなかの一篇です。


邦訳は、アマゾンさんでは現在在庫切れになってるみたいですけど、出版社さんのホームページ
http://www.taiheisha.co.jp/syuppan/lisbeth/lisbeth3-7.html
では注文リストに載っているし、たぶん出版元に直接注文するなり、どこか別の本屋さんに注文すれば、入手できる可能性はあると思います。(たぶん)