「きらきら」シンシア・カドハタ


シンシア・カドハタの「きらきら」を読みました。
2005年ニューベリー賞を受賞した作品です。
作者は、アメリカの日系三世とのことですが、この物語も、日系人の家族のお話です。
最初、「難病で少女が若くして死んでしまうお話」ということで、てっきり実話かと思って読みはじめたのですが、どうやら、実話ではないようです。
だから…かどうかはわかりませんが、重苦しい話ではありません。「美しい」という言葉の似合う作品です。「詩情あふれる」というのでしょうか、非常に映像的な印象をうけました。
そしてこの作品は決して、「きれいな女の子が死んでしまう」という、ただそれだけで、「美しい物語」になっているわけではありません。
むしろ、「楽しかったキャンプ」だとか、「苦労して手に入れたマイホームにみんなで引っ越した日のこと」といった、なんでもない普通の思い出が、とても「きらきら」と輝いて思えるのです。


主人公は述べます。

I used kira-kira to describe everything I liked: the beautiful blue sky, puppies, kittens, butterflies, colored Kleenex.


それに対して読者は、
「青空 blue sky」はともかく、「ティッシュペーパー Kleenex」は「きらきら」じゃないのでは?
という疑問が、当然、わきます。


けれど、物語を最後まで読みすすめるうちに、なるほど「ティッシュペーパー」も「きらきら」だ、と納得させられる仕掛けになっています。
そこが、この物語のなかの一番の読みどころであり、もっとも美しいシーンだと思うので、どういう手法で納得させられてしまうのか、ここに書くのはやめておきます。
ただ、世界は輝いている。そのことに気がつくのに、たくさんのお金はいらない。身近にあるもので、いくらだって世界は素晴らしいと思うことができる。
生きていることは素晴らしいと思うことができる。
そんな物語です。


そして読み終わったあと、そういえば「涙」もまた、「きらきら」したもののひとつだったっけ、とそう思い、だから悲しい思い出も、どこか「美しい」のだな、と気づかされるような物語です。


英語は比較的簡単で、読みやすいですし、
「泣けるとわかっていて読んで、やっぱり泣いてしまう」という方には、オススメの本。
ちなみに私はそういう人間ですので、ついつい泣いてしまいました。
予想を裏切るようなできごとが起きるわけではない、奇跡なんて起きない、イヤなこともある、悲しいことも。
にもかかわらず、「いいなあ」って、思わされるんですよね。
で、私も少しは、何かをがんばってみようかなあ…なんていう気になりました。
心が洗われたような感じで、読後感は非常に心地よかったです。


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きらきら

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