「図説ドルイド」ミランダ・J・グリーン

「図説ドルイド」 ミランダ・J・グリーン(Miranda J. Green)著 大出健:訳 井村君江:監訳 東京書籍。

ケルト」の「ドルイド」について書かれた本。図説、ということで、図版は、けっこうありますが、モノクロで、カラーではありません。
内容は、入門書、といった感じです。
ドルイドについて、ローマの文献や、ヨーロッパ各地からの出土品、ウェールズの神話「マビノギオン」等から推測されるドルイドの姿について、書かれたものです。が、あまり踏み込んだ推測ではなく、なるべく、「わかっているかぎりの事実」のみの列挙にとどめよう、という姿勢がみえ、「こう推測されるが、もちろん、そうではないかもしれない」「文献では、こう書かれているが、事実でない可能性もある」といった感じの文章です。そのため、「要するに、ドルイドについては、その正しい姿は、ほとんど何もわかっていないんだな」という印象を抱きました。

私がこれまで、ドルイドについて抱いていたイメージは、ファンタジー小説に登場する、「ドルイド=魔法使い」「ドルイド=賢者」「ドルイド=じじい(老年の男性)」、といったようなイメージだったのですが、この本は、そういうファンタジー小説にはあまり登場しない、「生贄の儀式」の祭祀者としてのドルイド、のインパクトが強くて印象にのこりました。
しかし、日本でも、たとえば橋を作るとき、生きたまま人を埋めたり、神への生贄としての、人身御供の習慣というものはあったし、合戦のさいは、武士は相手の首をとるのが当たり前だったことを考えると、べつだん特殊なことでもないな、とも思いました。
そして日本の場合、生贄は多くは蛇神に捧げられ、生贄の儀式で有名なインカの太陽神、ケツァルコアトルも「翼ある蛇」ということを考えると、ドルイドの生贄の儀式も蛇神信仰と関係…つまり「竜」と関係があるのではないか? と思ったのですが、そのへんのことは書いてありません。
とにかく古代のドルイドというのは、ドルイド自身の手による文字での文献が残っていないために、その正体はわからないのだ、ということだけがわかるだけです。

そして、現在のドルイドというのは、昔のドルイドとは関係がないということ、ストーンヘンジドルイドも本来は関係ない、ということも書かれています。古代のドルイドにおいては、男女の優劣はなく、女性のドルイドも、男性ドルイドと同じ権力をもっていたけれども、現在のドルイド教団のなかには、フリーメイソン的なものや、男性優位のものが多いのだそうです。しかし、そうでなく男女平等な教団もあるそうですし、もしかしたら日本人が入会できる教団もあるかもしれません。
多くの教団は、インターネットでサイトをひらいているそうなので、のぞいてみるのも楽しいかも。
こちらとか→http://www.othergods.org/


なお、この本の訳者さんは、大出健さん(「修道士カドフェル」の訳者さん)ですが、井村君江さんが監訳をしていて、十六ページにわたる「あとがき」は井村さんが書いています。


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