「バウンダーズ」敗北宣言

どうにもスッキリしないので、ダイアナ・ウィン・ジョーンズの「バウンダーズ」について、ずっと考えつづけておりました。その一部を記して終りにします。…一部といっても長いですが。


「僕が知っているどの世界でも、がらんとしている場所ではいつでも紙くずが風に舞っている。気のめいるような現実だ(in every world I've known, when a place is empty there is always paper blowing about. A depressing fact.)」(本文より)


まず、上記の文で、<Real>ではなく<Fact>という単語を使っているのは、意味があるんじゃないかな、という気が、なんとなくしました。主人公はその<Fact(事実)>を<Real(真実)>だと認めたくなかった。だから意識して、<Real>という言葉を使わなかった、のかも。
<故郷に向かう者>ではなく、がらんとした場所で舞っている<Paper(Discardされたカード、つまり捨てられた紙くず)>、それが<自分>、それが<現実>だと本当はわかっていた、でも認めたくなくて、ずっと目をそらしていた。
それは物語のはじめから、ずっとそうで、まず、自分の将来について自分がどうしたいのか、両親にほんとうのことが言えなかった。ヘレンにたいしては、自分を実際よりも偉くみせようとした。アダムに新聞をみせてもらったとき、日付は読んだのに、年号は見ようとしなかった。そのほかにも、「自分に都合の悪い現実」に対して、わざと見ないか、考えないようにする態度をとりつづけていた。
だから<They(あいつら)>の顔をはっきりと見ることができなかった。
<They>=<現実>、
<They>を怖れていたというより、ほんとうは、<現実>を怖れていた。直視できないのではなく、直視したくなかっただけ。
自分で自分を偽っていて、ゆえに<Unreal(偽りの存在)>だった。


怖れて目をそむけていては、勝負になんかならない。きちんと正面から向き合い、現実を知ることができて、はじめて現実と戦える。
<現実>を<move(動かす)>ことができる。<Revolution(革命)>だってできる。


<They>を怖れるのをやめ、自分で自分にウソをつくのをやめ、自分のほんとうのやりたいことをやったとき、主人公は、<Realな自分>になった。そして<Real>を動かす力をもった。
<Their Real Place>から<Real>を<Our Worlds>のほうへ動かして、<Our Real Worlds>に戻した。
<They>から<We>へ。三人称に奪われていたリアルが一人称のものになった。(ゆえにこの物語は一人称で語られている)
そして、<We(僕たち)>は<Their Place>から<They(あいつら)>を追い出して、ただの<Place>にした。


一番の主題は、
<Real>=<Life>=<Free>
「自分の人生の選択を他人まかせにせず、自分の決めた道をゆけ、どの世界を選ぶのも自由、可能性は無限」というのが、根底にあるメッセージかな、と思うのですが、しかし私にわからないのは、<ゲームのルール>。
おそらく、トランプの「ブリッジ」なんじゃないかな、とは、思うのですが。


スペード(騎士・剣)=ヨリス ハート(聖職者・聖杯)=ヘレン
ダイヤ(商人・金)=ジェイミー クラブ(農業・棍棒)=あいつら

力関係は、
スペード > ハート > ダイヤ > クラブ
だし、「ブリッジ」は二人一組で戦うようだから、「あいつら」に命がふたつあることや、ジェイミーがヘレンのことを<friendly neighborhood enemy>と呼んでるのも、そのあたりと関係あるのかな、と。(ブリッジのペアはランダムで決るみたいなので、敵は味方のなかにいる、という状況も、ある意味、起きるのではないかと推測。ペアになった相手に足をひっぱられるという…)


ルール2である<The no interference rule>も、発動したのが、ジェイミーの場合、盗まれたり賄賂を要求されて、お金を奪われそうになったとき、だし、
ヨリスの場合は剣を奪われそうになったとき、なのを考えると、やっぱりジェイミー=ダイヤ。だから弱いと判断された。が、ジョーカーになってしまった。
「ブリッジ」では、ジョーカーは使われないので、ゲームに参加できない。ゆえにプレイヤーではなく、「ディレクター」(審判みたいなもの?)になったのではないか、と推測。


とはいえ、私、「ブリッジ」のルール、「よくわかんないよ〜(涙)」です。いくつかのサイトさんを参考にしたのですが、私の頭では、理解が難しくて…。実際にプレイしてみれば、もっとわかるのかもしれませんが。ゆえに、そこのところがわからないかぎり、ほかのことも全部わからない。長々と考えつづけた結果、得た結論は「わからない」です…。そして「私の頭が悪い」という現実…。作者は手がかりを「これでもか」というくらいに、出してくれていますのにね…。
ですので、ひとまず敗北宣言。いったん錨をあげて、次の世界に旅立とうと思います。


とりあえず、私が参考にした「ブリッジ」のサイトさんは
こちら→http://www.jcbl.or.jp/
と、こちら→http://slamking.at.infoseek.co.jp/rulebook/rule1997.htm


バウンダーズとあいつら、の間で行われた最終の戦いは、これだ、という気が、ひしひしとするのですが、しかし確信はもてません…。