ナルニア国物語「ライオンと魔女」C.S.ルイス

The Chronicles of Narnia (The Chronicles of Narnia)The Chronicles of Narnia (The Chronicles of Narnia)
C. S. Lewis

Harpercollins Childrens Books 2008-04


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Wrong will be right, when Aslan comes in sight,
At the sound of his roar, sorrows will be no more,
When he bares his teeth, winter meets its death,
And when he shakes his mane, we shall have spring.
アスランきたれば、あやまち正され、
アスラン吼ゆれば、かなしみ消ゆる。
きばが光れば、冬が死にたえ、
たてがみふるえば、春たちもどる。

C.S.ルイス C.S.Lewisの「ライオンと魔女 The Lion, the Witch and the Wardrobe」1950年。
ナルニア国物語シリーズの第1巻です。

ナルニアは何年か前に邦訳は箱入りセットを買って全部読んだのですが、内容ほとんど忘れてしまったので、映画化のおかげか洋書の箱入りセットもちょっと安くなってるし、ちょうどいいから買って読むことにしました。
一見、平易そうな英語で、実際そんなに難解すぎるというほどではないのですし、挿絵もたくさんあるので内容はだいたいわかるのですが、でも丁寧に読もうとするとけっこう難しい文章でした。長い文章や古い単語がときどきちょこんとでてきたりもします。風景描写などは丁寧で綺麗。いろいろな幻獣や魔物の名前などは辞書では載っていないものもありました。
とりあえず邦訳と読み比べてみて、自分がかなり読み違いをしてたことも知り、まだまだ修行がたりないと痛感。道のりは厳しい…。


ナルニア国物語は、作品が発表された順番に読んでいくやりかたと、作品内の年代順(ナルニア国の歴史の流れに沿う)に読んでいくやりかたとあります。洋書だと作品内年代順に読むのが普通(?)なのか、私が持っているペーパーバックもこの巻は2巻となっています。


ナルニア国物語キリスト教と密接に結びついているので、たとえば白い魔女リリスの血族だとか、リリスはジンだとか、だからか魔女の悪い手下にはイフリートとかアラビアンナイトに出てくるようなイスラム世界の魔物、精霊がいるけれど、アスラン側にはそういったものはいない…といったようなこととかは興味深いです。
リリスというのはアダムの最初の奥さん(エヴァよりも前)なんですけど、アダムのことがいやで逃げていったという…(でも逃げたくなる気持ちもわかる…)
また、アスランの処刑のとき、そばにつきそうのが女の子だけというのも、聖書の物語と重なります。スーザンかルーシィのどちらかがマグダラのマリアかな…。


とはいえ、春 対 冬 という対決、物語のなかで何度かくりかえされる

いつもいつも冬なのに、けっしてクリスマスがこない!
Always winter and never Christmas; think of that!

という嘆き。
クリスマスがこないなんて最悪!、というといかにも子供向けの童話らしくかわいらしい感じですけど、クリスマスというのは本来冬至のお祭りで、冬至というのは一年で昼が最も短い日…でもそれをすぎると昼は一日一日長くなっていく日…のことです。つまり光が闇に勝利して勢力をとりもどす日なわけで、このあたりはケルト的というか…。
最初にルーシィだけで一回、エドマンドとふたりで二回、三回めに兄妹そろってナルニアに行くことになるんですけど、「3」という数字がもしかすると意味をもっていて、だから衣装だんすからナルニアにはもう行けない(4回目はない)のかもしれないとか…わかりませんが。
ナルニアを読むと、今あるファンタジーの根本みたいなのがたくさん見つかるような気がします。真似というか、明らかに意識していて有名なのはライラの冒険ですけど、ほかにもいろいろ、そんなにたくさん本を読んでいない自分でも何冊か思い当たるくらいナルニアを下敷きにしているのかなと思う本はあります。


しかしナルニアも、鏡のついた衣装だんすから別世界へ小さな女の子が行く、残酷な女王が支配している、しゃべる動物たちがいる…などなど、ルイス・キャロルの「不思議の国のアリス」かな?と思われないでもないです。ルーシィ・バーフィールド Lucy Barfield という女の子のために書き、主人公の名前にしているあたりもちょっと似てます。内容も物語のタイプもまったく違いますが。


あらすじ
第二次世界大戦のさなか、ピーター・スーザン・エドマンド・ルーシィの四人のきょうだいは、ロンドンから疎開し片田舎に住む学者先生のお屋敷にお世話になることになります。あいにくの雨の日、屋敷を探検するなかでルーシィは衣装だんすの向こうの不思議な国、ナルニアで下半身が馬、上半身が人間の男の人の姿をしたフォーンのタムナスさんと出会います。ナルニア白い魔女に支配され、ずっと冬がつづいていました。
一方、エドマンドは白い魔女と出会い、魔法のお菓子を食べてしまったがために、魔女の手下になってしまいます…!


エドマンドが魔女からもらうお菓子は、邦訳ではプリンとされていますが、ターキシュ・ディライト Turkish Delight というお菓子。(これは邦訳のあとがきでも触れられています)
食べたことないからどういう味か想像できませんけど…。
ナルニアは食事の場面が生き生きとしていて、おなかがすいてるときに読むとよけいにおなかがすいて困ります…。


「ナルニア国ものがたり」全7冊セット 美装ケース入り「ナルニア国ものがたり」全7冊セット 美装ケース入り
C.S. Lewis C.S.ルイス 瀬田 貞二

岩波書店 2000-11


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